持株会を続ける人と、学費に引き出す人。卵を盛るカゴは、会社と同じ場所にしない

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「卵を一つのカゴに盛るな」

投資をしていると、一度は耳にする言葉です。意味は、全財産を一つの投資先に集中させず、複数に分けておきなさい、ということ。カゴを落としたら卵が全部割れるように、一つに偏っていると、それが崩れたときに一気に全部を失います。

では、持株会はどうでしょうか。

持株会に入っている人が、2人いました

同じ会社で、持株会に入っている人が2人いました。

ひとりは、これからも持株会で持ち続けるようです。

もうひとりは、子どもの学費として、まとまった分を引き出して売却しました。

どちらが正しいと言いたいわけではありません。ただ、この2人の選択を見ていて、「持株会はカゴの話として考えると分かりやすい」と感じました。

持株会は、いちばん割れやすい場所のカゴ

持株会は、毎月の給料から決まった額が天引きされ、会員みんなの分をまとめて自社株を買う仕組みです。多くの場合、会社から奨励金が上乗せされるので、少額から積み立てられて、お得感もあります。

ただ、買っているのは自社株です。

会社員は、すでに給料もボーナスも退職金も、その会社から受け取っています。そこへ持株会で自社株まで積み立てると、会社の業績が悪化したときに、収入と資産が同時に傷みます。一つの会社に、仕事と財産の両方を預けている状態です。

しかも、持株会は毎月自動で買い続けるので、気づかないうちにカゴの中の卵が増えていきます。

持株会が悪いわけではありません。奨励金という、最初から得をする仕組みがあるのは確かです。大事なのは、入るかどうかではなく、資産全体の中で自社株が何割を占めているかです。

一文にまとめるなら、「収入源と同じ場所に資産を置かない」。

それでも、売りにくい

頭では分かっていても、自分の会社の株は心理的に売りにくいものです。理由は三つあると思います。

一つ目は愛着です。引き出して売ることが「会社を見限る」ようで、後ろめたく感じます。

二つ目は過信です。中身をよく知っているぶん、「うちは大丈夫」と思いやすく、リスクを実際より小さく見てしまいます。

三つ目は周りの目です。同僚や上司が入っていると、自分だけ減らすのが気まずくなります。

ただ、売ることと、会社を信じることは別の話です。会社の将来を信じて全力で働くことと、生活の土台をその会社だけに置かないことは、両立します。

「引き出す理由」を、人生のカレンダーに先に書き込む

売りにくさの正体は、「理由がないと動けない」ことだと思います。

だから、イベントを引き出す理由にしてしまいます。

子どもの入学や卒業、車の買い替え、家の修繕、家族の大きな旅行。こうした出来事を理由にすれば、「会社を見限る」という後ろめたさがなくなります。しかも、自分の気分ではなく、外のスケジュールで決まるので、感情が入り込みにくくなります。

周りの目が気になる人にも、この方法は向いています。「子どもの学費で」「家の修繕で」と言えば、誰も何も思いません。

もっとも、持株会は、誰がいくら持っていて、いつ引き出したかが、基本的に他の人には分かりません。気まずさの多くは、頭の中で作っている心配なのかもしれません。

売って、違うカゴに移す。それができなければ、使う

ここが、いちばん伝えたいところです。

持株会から引き出して売ったお金は、自社株に買い戻さず、自社と関係のない投資先か、生活防衛資金に回します。卵を別のカゴに移すということです。ここを外すと、売った意味がなくなります。

もし、周りの目が気になって売れない、あるいは売ったあとの投資先が決まらない、という場合は、先に使ってしまうのも一つの手です。学費でも、家のことでも、家族の思い出でも構いません。自社株という割れやすいカゴの卵を、先に生活の中で使い切ってしまいます。

毎年少しずつ、「資産全体の1割以下」を目安に減らしていくのも、無理のない方法です。一度にまとめて売ると税金も一度にかかるので、何年かに分けるほうが気持ち的にも楽です。

最後に

持株会を続ける人も、引き出す人もいます。どちらにも、その人なりの理由があります。

ただ、続けるなら、「他のカゴもあるか」は確認しておきたいところです。引き出すなら、「そのお金を、別のカゴに移したか」を確認したいところです。

会社は仕事で応援する。お金は分けて守る。

持株会に入っている方は、一度、自分の卵がどのカゴに入っているかを見直してみてはいかがでしょうか。

※持株会の引き出しや売却の時期・方法は、会社ごとの規約で決まっています。また、会社員は決算前後などにインサイダー取引規制で売買できない期間があります。実際に動く前に、自社の規約と社内のルールを確認してください。