シーティーエス(4345)の中間決算(2026年4〜9月)を読みました。建設現場向けに、カメラや通信などのICTサービスと、測量機器を貸し出している会社です。本社は長野県上田市で、時価総額(会社全体の株の値段)は約328億円です。
この会社は、お金まわりがとても健全です。銀行からの借り入れはなく、会社のお金の76%は返さなくてよい自分のお金で、本業で稼いだ現金は10年連続でプラスです。それなのに、手元の現金は2年で約28億円も減っています。いったい何に使ったのか。調べてみると、答えは「安定への投資」でした。ただ、成長もあきらめていないように見えます。株価は年初来高値の1,112円から781円まで約30%下がっていて、その理由も合わせて考えてみます。
銘柄カード
- 会社名(証券コード):シーティーエス(4345)
- 業種:サービス業(建設現場向けのICTサービス、測量計測機器のレンタル・販売)
- 規模:小型株(時価総額 約328億円)
- 配当利回り:3.84%(Yahoo!ファイナンスの画面表示。11月4日の終値781円、年間配当30円で計算)
- 年間配当:30円(2027年3月期の会社予想。中間15円+期末15円。2026年3月期は29円)
- ラベル:配当利回りは3%以上で、高配当の基準を満たしています
- 何の会社?:長野県上田市に本社がある、建設ICTの専門会社です。1990年設立、2002年に上場し、今は東証プライムで、決算は3月末です。事業の中心は、建設現場向けの情報サービス「SAP(サイトアシストパッケージ)」などを扱うDDS事業と、測量機器のレンタル・販売を扱うSMS事業です。2026年3月期の売上の構成は、DDSが約59%、SMSが約30%、その他が約11%でした(Yahoo!ファイナンスの企業情報)。従業員数は連結285人、平均年収は653万円です。レンタル機器の大半は、買わずにリース(借りて月々支払う契約)で調達しています。
気になる数字(冒頭チェック)
左が今の値、右が10年の推移です。緑の●は基準を満たしたもの、橙の▲は注意して見るものです。
まず、株価が割安かどうかです。配当利回り(株価に対して、1年にもらえる配当の割合)は3.84%で、基準の3%以上を満たしています。PER(株価が、1株あたり利益の何年分か)は11.8倍で、基準の15倍未満です。ここまでは●です。PBR(株価が、1株あたり純資産の何倍か)は1.80倍です。1倍を割ると「会社の財産より株価が安い」状態ですが、そこまでは安くないので▲にしました。株価は年初来高値の1,112円から約30%下がり、10月29日に年初来安値748円をつけたあとは、780円前後で落ち着いています。
次に、10年の推移です。10のうち9つが基準を満たしました。売上は10年で約1.7倍、1株あたりの利益(EPS)は約3.3倍になり、本業の儲けの割合(営業利益率)は16%から26%に上がっています。自己資本比率(会社のお金のうち、返さなくてよい自分のお金の割合)は76.2%で、40%以上あれば安心、60%以上なら理想とされる中で、かなり高い水準です。本業で実際に入ってきた現金(営業キャッシュフロー)は、10年すべてプラスでした。ROE(株主から預かったお金で、どれだけ儲けたか)も、10年すべて10%を超えています。
▲は現金等(手元の現金)です。2024年3月期の69.5億円から、2026年3月期は41.7億円まで、2年で約28億円減りました。9月末は36.4億円です。有利子負債(利息を払って借りているお金)は、貸借対照表に借入金がないので●にしました。ただ、リース債務(リースのこれからの支払い)が、9月末で12.9億円あります。レンタル機器の大半をリースで調達しているためです。現金の使い道は、あとで詳しく見ます。
今期の中間決算は、売上が62.05億円(前年同期比+0.3%)、営業利益(本業の儲け)が15.45億円(+1.5%)で、ほぼ横ばいでした。売上から原価を引いた儲けは増えましたが、人件費や拠点の移転などの費用(販管費)が+5.0%増えて、営業利益の伸びは小さくなりました。
事業別に見ると、主力のSAP(建設現場向けに、カメラ・クラウド保存・通信・ディスプレイなどをまとめたサービス)が15.4億円(+18.5%)と伸びました。ただ、SAP以外の情報サービスは約−2.4%、測量機器のSMS事業は−8.6%で、SAPの伸びを打ち消した形です。会社は、建設現場の着工が鈍かったことを理由にしています。
営業利益より経常利益(本業以外の収入も含めた儲け)のほうが伸びた(+4.3%)のは、持っている株からの配当金が増えたことと、株を売った利益(0.61億円)が入ったからです。この売却益を除くと、経常利益は前年同期とほぼ同じ(+0.8%)です(私の概算)。
気をつけたいのは、純資産(会社の正味の財産)の増え方です。純資産は、3月末の157.1億円から9月末の177.7億円へ、半年で20.7億円増えました。ただ、本業の儲け(純利益)は12.4億円しかありません。差は、会社が持っている株の値上がりです。純利益に株の値上がり17.2億円が加わり、配当と自社株買いで約9億円減った結果です。値上がり分も含めた増え方を包括利益といい、29.6億円で、純利益の約2.4倍でした。本業の稼ぎより、持っている株の値上がりのほうが大きく効いています。
会社が持っている株など(投資有価証券)は、96.3億円から124.9億円に28.6億円増えました。中間期の買い増しは3.4億円(売った分は1.0億円)なので、残りの約26億円は値上がりだと見ています(私の概算)。いまや総資産の53%が、この株などです。売っていない値上がり分(含み益)は、税金を引く前でざっくり60億円前後と見ています(私の概算)。時価総額328億円の、約38%にあたります。何の株かは短信に書かれていないので、半期報告書で確認したい点です。会社は、リースより自前で機器を買ったほうが得になる時に備えて、すぐ使えるお金を確保し、インフレでお金の価値が目減りしないよう、株で持っておく目的(レンタル資産の保全)だと説明しています。株で積極的に儲けるつもりはない、とも書いています。
会社は、通期(2027年3月期)の予想を変えていません(売上135億円、営業利益35.3億円)。前年の下期(10〜3月)と比べると、下期は売上を約+11%、営業利益を+7.5%伸ばす計画です(私の概算)。上期が+0.3%だったので、下期にかなり戻す前提です。中期経営計画では、2029年3月期に売上160億円、営業利益44億円、SAP売上55億円を目指しています。SAPは約28億円から55億円へ、毎年25%前後の伸びが必要です。
自社株買い(会社が自分の株を市場で買い、株主に報いる方法)は、上限50万株・5億円、12月25日までの枠です。9月末までに330,800株・2.78億円(平均約840円)を買いました。今の781円だと、金額の枠が余ったまま、株数の上限に先に届きそうです(私の見方)。
ここまでの一言:本業の数字は10年きれいに積み上がり、財務は健全です。ただ、現金は減っていて、中間期の本業は横ばいでした。次は、その現金がどこへ行ったのかを見ます。
現金は何に使われたのか
手元の現金がどこへ行ったのかを、中間期(半年)の数字で追いました。本業で入ってきた現金(営業キャッシュフロー)は12.7億円です。ここから、配当が6.2億円、リース返済が3.7億円、設備とソフトの購入が3.0億円、自社株買いが2.8億円、株などの買い増し(買った分から売った分を引いた額)が2.4億円出ていきました。差し引きで、手元の現金は5.3億円減っています。
家計にたとえると、稼いだ現金の中から、株主へのお返し(配当・自社株買い)、毎月の支払い(リース)、積立(株などの運用)に回して、手元の現金が少し減った、という形です。借金が増えたわけでも、大きな買い物をしたわけでもありません。
つまり、使い道はほとんどが「安定への投資」です。配当と自社株買いは株主に報いるための安定、リース返済は商売の道具を持ち続けるための安定、株などの運用は財産を守るための安定です。
2025年3月期と2026年3月期の2年では、本業で約62億円の現金が入り、投資で約42億円、財務(配当・自社株買い・リース返済など)で約47億円が出ていって、現金は約28億円減りました。配当と自社株買いが約31億円、設備投資が約20億円(IR BANK)で、残りの中身は今回の資料では確認していません。
現金は減っていますが、現金と持っている株を足すと、3月末の約138億円から9月末の約161億円に増えています。ただ、増えた分はほとんど値上がりです。
それでも成長はあきらめていない
では、成長を捨てたのかというと、そうは見えません。SAPの売上は15.4億円(前年同期比+18.5%)で、会社の成長を引っ張っています。10月1日には、建設業向けのAIエージェント「SAPマインド」も出しました。中期経営計画も、2029年3月期に売上160億円(2026年3月期比+25%)、営業利益44億円(+30%)、SAP売上55億円(+96%)と、高い目標を下ろしていません。
成長への投資は、設備ではなく、人と営業の費用に出ているのかもしれません。販管費は+5.0%の16.63億円で、会社は、SAPを広げるための営業活動費用、ベースアップを含む人件費、システム管理費の増加を挙げています。設備投資が小さく見えるのは、レンタル機器をリースで調達していて、リースで新しく入れた分が、現金の動きの表に出てこないからでもあります。リース資産は、3月末の18.1億円から9月末の19.4億円に増えました。
ただ、数字に出ている成長は、まだ一部です。中間期の売上は+0.3%で、SAP以外は伸び悩んでいます。通期予想を達成するには、下期に売上を約+11%戻す必要があり、成長の手応えは、下期の数字で見えてきます。
配当の10年
配当は10年で6円から29円に増えました。前の年と比べた9回のうち、9回とも増配で、減配も据え置きもありません。今期の会社予想は30円で、中間配当は10月29日に15円(前年は14円)と決まりました。IR BANKで1株配当に赤い*が付いている2017年3月期と2018年3月期は、配当性向(利益のうち配当に回す割合)が空欄ですが、理由は今回の資料では確認していません。
配当の方針は「累進配当」で、2027年3月期から2029年3月期は、前の年の配当(記念配当などは除く)を下げず、同じか増やすことを基本にしています。減らさない約束なので、利益が落ちても配当を下げにくい形です。
配当の余力も見ておきます。中間期の営業キャッシュフロー12.7億円から、設備・ソフトの購入(約3.0億円)とリース返済(約3.7億円)を引くと、約6.0億円です。配当の支払い6.2億円とほぼ同じで、前年同期の約9.9億円より、余裕は薄くなっています。足りない分は手元の現金から出ています。
EPSと配当性向の10年
EPS(1株あたりの利益)は10年で19.94円から65.04円へ約3.3倍になりました。下がったのは、2019年3月期の小幅な減少だけです。純利益は7.99億円から26.9億円へ、約3.4倍です。営業利益と経常利益の差にも注目しました。2024年3月期は営業利益28.7億円、経常利益27.9億円と、経常のほうが小さかったのが、2026年3月期は33.7億円と37.3億円で、経常が3.6億円上回っています。株の配当や売却益など、本業以外の収入が効き始めている、と私は見ています。
配当性向は、2019年3月期から41〜53%で動いています。2026年3月期は44.6%で、今期の会社予想は約45%(30円÷66.31円)です。30〜50%が健全とされているので、ほぼ範囲内です。2023年3月期と2024年3月期は、50%を少し超えていました。2017年3月期は約30%(配当6円÷EPS19.94円、私の計算)だったので、配当のほうが利益より速く増えてきた形です。
営業キャッシュフローの10年
営業キャッシュフローは、本業で実際に入ってきた現金です。10年すべてプラスで、2026年3月期は33.4億円と過去最高でした。前の年より減ったのは3回(2019年・2023年・2025年の3月期)です。売上に対する営業CFの割合は26.19%で、営業利益率26.43%とほぼ同じです。帳簿上の利益が、そのまま現金で入ってきている形です。
ただ、営業CFが増えても、現金は増えていません。理由は、前の「現金は何に使われたのか」で見たとおりです。リース債務の返済は、中間期だけで3.7億円(前年同期は4.1億円)あり、年に7〜8億円ほどが、還元とは別に出ていくと見ています。
今期の中間期の営業CFは12.7億円で、前年同期の15.2億円より減りました。主な理由は、仕入先への支払いの増減が、+4.7億円から−1.0億円に変わったことです。支払いのタイミングで動く項目なので、一時的な動きの可能性があります(私の見方)。
魅力と懸念
- 魅力:財務が堅く(自己資本比率76.2%、借入なし)、営業キャッシュフローは10年プラスで、配当は9回連続の増配です。減らさない方針(累進配当)もあります。現金の使い道は安定寄りですが、SAPは+18.5%で、中期経営計画の成長目標も維持しています。PER11.8倍・配当利回り3.84%と、株価は割安な水準まで下がっています。持っている株(125億円)と現金(36億円)を時価総額328億円から引くと約167億円で、含み益にかかる税金(約20億円)とリース債務(約13億円)を戻しても約200億円です。今期予想の営業利益35.3億円の6倍弱で、本業だけを見ると、さらに割安に見えます(私の概算)。
- 懸念:成長の手応えが、まだ数字に出ていないことです。中間期は売上+0.3%、営業利益+1.5%で、SAP以外の情報サービスは約−2.4%、SMSは−8.6%でした。通期予想は、下期の売上が約+11%、営業利益が+7.5%という前提です。現金の動きの表に出る本業への投資は小さく、純資産の増加は株の値上がりによる分なので、相場次第で戻ることもあります。配当の余力も、中間期は約6.0億円で、配当6.2億円とほぼ同額でした。
まとめ
財務は健全です。自己資本比率は76.2%、営業キャッシュフローは10年プラスで、配当は9回連続の増配です。それなのに現金が減っているのは、稼いだお金を、配当・自社株買い・リース返済・株などの運用という「安定への投資」に回しているからでした。一方で、SAPは+18.5%、SAPマインドも始まり、中期経営計画の成長目標も下ろしていません。守りを固めながら成長もあきらめない、すごい会社だと、私は読んでいます。ただ、中間期の本業は横ばいで、通期予想は下期に売上を約+11%戻す前提です。株価が年初来高値から30%下がったのは、成長の手応えが数字にまだ出ていないからだと思います。安定と成長のどちらの影響が強いのか、みなさんはどう読みますか?
次の決算のメモ
- 半期報告書(2026年11月13日提出予定):リースで新しく入れた機器の額、ソフトウェアの投資額、投資有価証券の内訳(銘柄、持分法のファイルフォースの金額)、リース債務の流動分を含めた総額、評価差額金の中身、自社株買いの12月25日までの取得状況(9月末は330,800株・2.78億円)
- 2027年3月期の通期決算(2027年4〜5月ごろ):売上135億円・営業利益35.3億円・EPS66.31円の達成度、SAP売上(中間期15.4億円、+18.5%)、SAP以外の情報サービスとSMSの落ち込み、年間配当30円(期末15円)と2028年3月期の配当予想(累進配当)、現金等(9月末36.4億円)と投資有価証券(9月末124.9億円)の残高、営業CFから設備投資とリース返済を引いた額と配当の関係、中期経営計画(2029年3月期に売上160億円・営業利益44億円)の進み具合
免責
このブログは個人の見解であり、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。掲載の数値は執筆時点で確認できたものです。
出典
- シーティーエス 2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信〔日本基準〕(連結)(2026年10月29日)
- シーティーエス 剰余金の配当(中間配当)に関するお知らせ(2026年10月29日)
- シーティーエス 自己株式の取得状況に関するお知らせ(2026年10月8日)
- 売上・利益・EPS・配当・配当性向・営業キャッシュフロー・自己資本比率・現金等・ROE:IR BANK
- 株価・時価総額・配当利回り・PER・PBR・ROE・有利子負債・企業情報:Yahoo!ファイナンス

