2026年10月9日、毎日コムネット(8908)が2027年5月期の第1四半期決算を出しました。数字は増収増益で、きれいな内容です。でも私が面白いと思ったのは、数字そのものより「会社が業績予想をどう出しているか」でした。
まず数字をざっくり
2026年6月〜8月の3か月で、売上高は51.9億円(前年同期比+8.3%)、営業利益は3.2億円(+10.7%)、親会社株主に帰属する純利益は2.1億円(+18.0%)でした。
ただ、ここで一つ不思議なことがあります。会社が出している上半期(第2四半期累計)の営業利益予想は3.13億円。第1四半期だけで3.16億円と、もう超えているのです。短信にも「計画を大きく上回り推移」と書いてあるのに、予想は据え置き。通期の売上予想も前期比マイナス4.0%のままです。
予想を触らないのは、慎重だから
理由は短信の中にありました。通期の売上がマイナス予想なのは、販売用不動産の売却が下期に計画されているからです。売却は金額もタイミングも大きく振れるので、会社は決まるまで予想に織り込みません。さらに、売上の約75%を占める不動産マネジメント部門は、3〜4月に売上が集中する季節性があります。第1四半期の好調だけで年間を語れない、と会社自身が分かっているわけです。
好決算なのに予想を触らない。この慎重さは、上方修正の余地が残っているとも読めますし、会社が堅実だとも読めます。
不動産株なのに、なぜ揺れにくいのか
不動産株が金利上昇や市況悪化で売られやすいのは、物件を仕入れて売るデベロッパー型の会社です。毎日コムネットは違います。稼ぎの土台は、学生マンションなどを管理・運営して毎月入ってくる収入です。売却益で大きく振れる部分は、今回の第1四半期ではほぼゼロでした。それでも増収増益になっています。
単発の売却で稼ぐ会社より、毎年決まった収入が入る会社のほうが景気に左右されにくい。この会社はその構造を持っています。土台が堅いから、大きな売却の時期がずれても全体が崩れません。
借金を減らして、守りを固めてきた
長期の財務を見ると、2026年5月期の動きが目を引きます。営業キャッシュフローが62.6億円(前期24.4億円)と跳ね上がり、財務キャッシュフローはマイナス50.7億円。不動産を売って現金を作り、そのまま借入返済に回した形です。有利子負債は129億円から89億円に減り、自己資本比率は42.4%から49.7%になりました。
ひとつ補足すると、自己資本比率の改善は、総資産が309億円から281億円に縮んだ分も効いています。利益の積み上げだけではない点は、正確に押さえておきたいところです。
配当は、28円で5年止まってから動き出した
配当は2019年5月期から2023年5月期まで28円で横ばいでした。それが30円、32円、38円と上がり、来期の予想は39円です。来期の予想EPS110.96円に対して配当39円なので、配当性向は約35%。実績でも35%前後で推移していて、方針が固まっているように見えます。
もう一つの還元が自社株買いです。2023年5月期に3億円、2026年5月期に4.63億円を実施し、2026年5月期の総還元額は10.4億円、総還元性向は59.5%でした。配当だけ見ると35%ですが、自社株買いを含めると、利益の約6割を株主に返している年があります。今回の短信でも、期中平均株式数が前年同期より約50万株減っていて、その効果が見えます。ただし自社株買いは毎年ではなく、2024年と2025年の5月期は実施していません。余力があれば機動的に動くタイプ、というのが私の見立てです。
私の中で何に変わったか
この決算を見る前は、「学生マンションの会社」という漠然としたイメージでした。今は、「借金で育てた不動産を売って借金を返し、利益の3.5割を淡々と配当に回し、余力があれば自社株も買う会社」に変わりました。
身近なたとえにすると、毎月の家賃収入で堅実に暮らしている大家さんです。ときどき売るための物件を1つ手放してローンを減らし、また次の物件を仕入れて育てます。そのうえで、その年の稼ぎの3分の1ほどを、毎年きまって出資してくれた人に分けています。
気になる点と、次の答え合わせ
守りが強い一方で、成長の源泉は何か、という問いは残ります。学生向けの需要は、少子化という長期の逆風を抱えています。人材ソリューションや課外活動など、不動産以外の柱がどこまで育つかが、次の10年を決めそうです。
また、第1四半期は現金が約9.7億円減り、販売用不動産は約89億円と重めです。売却は下期の計画なので、現金が本格的に戻ってくるのはそれからです。
答え合わせは次の中間決算です。上半期の営業利益予想3.13億円を、会社がどこまで上回って着地させるのか。そして、予想を修正するのかしないのか。半年後の自分が、この記事を読み返して答え合わせをします。
※本記事は決算短信とIRバンクの公開データをもとにした個人の考察であり、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。投資判断はご自身でお願いします。
