No.1の社名はダテじゃない。製造会社を買って、売るだけの会社から抜け出した|No.1(3562)を10年のデータで読む

15C卸売業

No.1は、中小企業向けに情報セキュリティ機器やOA機器を売り、保守までセットで面倒を見る会社です。M&Aで仲間を増やしてきた会社で、その中に、自社でセキュリティ機器を作るメーカー(アレクソン)がいます。2026年10月14日に2027年2月期の中間決算が出たので、10年ほどの推移と、決算短信、決算説明資料を並べて読んでみました。

先に、数字のカードを置いておきます。

銘柄カード

項目 内容 銘柄 No.1(3562)東証スタンダード・小型株 株価 約1,700円(10月14日ごろの参考値) 配当利回り 約4.6%(予想配当79円) 予想PER 約11.2倍(会社予想EPS 152.34円) PBR 約2.6倍(中間期末の自己資本から計算) 自己資本比率 31.8%(中間期末) 営業CF 黒字が続いている(表で確認できる2016年2月期以降、11期連続) ROE 前期16.1%(今期予想の純利益で単純計算すると20%超)

株価と利回り、PER、PBRは10月14日ごろの値で、日々動きます。PERとPBRは、会社予想のEPSと中間期末の自己資本から私が計算し直した概算です。

何の会社?

  • 小規模企業を主な顧客に、情報セキュリティ機器(UTMなど)、複合機などのOA機器、法人携帯、電力、システム開発までを幅広く扱う会社。グループの顧客基盤は約4.1万社
  • 売上は、機器を売って終わりの「フロー」と、保守やサービスで継続的に入る「ストック」に分かれる。ストック売上は中間期で約21億円、比率は21.4%(前年同期15.3%)
  • 2024年以降、M&Aで子会社を増やしている。今期から新しく連結に入ったのはGloria。前期の下期に入ったのは、アイ・ステーション、進々堂商光、LGICなど

強みは「作れる」こと:アレクソン

普通のOA機器やセキュリティ機器の販売会社は、メーカーが作った機器を仕入れて、お客さんに売ります。八百屋が農家から野菜を仕入れて売るのと同じで、利益の大きな部分は作った側に行きますし、「この機能がほしい」と言われても、メーカーに頼むしかありません。

No.1は、この八百屋が自分の畑も持っている状態です。アレクソンが、セキュリティ機器の企画から製造までを手がけています。説明資料でも、会社は競合との違いを「他社製品の仕入販売」と「自社メーカー製造」の差として整理しています。畑を持つと、利益が自社に残る、営業現場の声をすぐ製品にできる、作った機器を約4.1万社の顧客に直販で、さらに全国の代理店網でも売れる、という3つが変わります。

数字にも出ています。中間期の営業利益は、アレクソンが4.6億円で、連結全体の5.7億円の大半を占めます。通期目標の9.7億円も、連結の16.5億円の約6割です。売上に対する利益率は、アレクソンが約17%、グループ全体が約5.8%でした(17%は、グループ内の取引や本社費の配分の影響を受けた数字なので、あくまで目安です)。

ただ、アレクソンの売上は中間期で26.5億円と、グループ全体(98億円)の約3割です。強みの部分が、まだグループの一部にとどまっているとも言えます。

決算を読む:売上は最高、利益は横ばい。だから「下期」がすべて

中間期(3〜8月)は、売上高98.0億円(前年同期比+28.0%)、営業利益5.7億円(▲3.2%)、経常利益5.3億円(▲19.1%)、中間純利益3.0億円(▲6.3%)でした。売上と売上総利益は過去最高、EBITDA(営業利益+減価償却費+のれんなどの償却額)も10.3億円で過去最高ですが、営業利益は前年を下回っています。

理由は、連結子会社が増えて費用の構成が変わったことです。売上総利益率は46.5%から51.8%に上がり、販管費率は38.8%から46.0%に上がりました。そのうえで、人への投資(採用・教育・待遇)で約1.0億円、のれんなどの償却で約1.7億円、販管費が増えています。営業利益率は7.7%から5.8%に下がりました。

経常利益の落ち込みが営業利益より大きいのは、前年に保険解約返戻金が約0.8億円あったことと、借入が増えて支払利息が約0.1億円から約0.5億円に増えたことが重なったためです。

通期予想は据え置きで、売上212億円(+20.9%)、営業利益16.5億円(+24.0%)、経常利益15.9億円、純利益10.0億円(+40.1%)です。中間期までの進捗を見ると、売上が46%に対し、営業利益は35%、経常利益は34%、純利益は30%にとどまります。

ここから残りの下期に必要な数字を逆算すると、こうなります。

  • 営業利益は約10.8億円。前年の下期は約7.4億円なので、約46%増
  • 純利益は約7.0億円。前年の下期は約3.9億円なので、約79%増

売上は下期に約114億円、前年の下期が約99億円なので+15%で済みますが、利益は大きく戻す計画です。会社は、下期に先行投資の成果が出ること、アイ・ステーションに経営資源を入れること、新商品などを理由に挙げています。

内訳を見ると、不安と期待の両方があります。営業利益の通期目標に対して、中間期の進捗は次のとおりです。 区分 中間期の営業利益 通期目標 進捗 No.1(単体) 1.7億円 4.6億円 約37% アレクソン 4.6億円 9.7億円 約48% アイ・ステーション ▲0.0億円 2.3億円 ほぼ0% その他の子会社 1.7億円 5.0億円 約34%

アイ・ステーションは、中間期はほぼゼロでしたが、通期は2.3億円を見込んでいます。下期の営業利益は、中間期より約5.1億円増やす必要があります。そのうち約2.3億円、つまり約45%をここが担う計算で、私はこの会社の立て直しが、いちばん効く部分だと読みました(この割合は、通期目標と中間期の実績から私が計算したものです)。会社の説明は「外部環境の変化による収益性の低下、PMI費用、シナジー発現のタイムラグ」でした。

主要KPIでも、新規顧客数は中間期が293社で、年間目標750社に対して約39%です。No.1ビジネスサポートの保有契約数は5,141件で、前の四半期より50件減りました。一方で、平均顧客単価は14,700円に上がっています。契約数を伸ばすフェーズから、単価を上げるフェーズへ移ったと会社は説明しています。

10年で見ると、売上は「買って」跳ねた

EDINET DBの年次データを、2016年2月期から並べてみます(単位は百万円。配当は株式分割の調整後)。 決算期 売上高 営業利益 営業利益率 純利益 営業CF 自己資本比率 1株配当 2016.2 6,797 268 3.9% 104 139 23.3% − 2017.2 7,057 304 4.3% 191 290 34.9% − 2018.2 7,715 278 3.6% 181 164 44.3% − 2019.2 8,164 330 4.0% 218 143 47.4% 7.5円 2020.2 8,818 361 4.1% 266 208 51.7% 15円 2021.2 11,838 615 5.2% 403 796 34.8% 22.5円 2022.2 13,919 853 6.1% 531 498 37.6% 26円 2023.2 13,308 1,150 8.6% 911 1,143 44.0% 32円 2024.2 13,452 1,227 9.1% 886 565 46.3% 33円 2025.2 14,209 1,039 7.3% 574 1,446 51.2% 35円 2026.2 17,529 1,330 7.6% 713 827 31.2% 78円

売上は10年で約2.6倍(年平均で約10%)、営業利益は約5倍(年平均で約17%)になりました。伸びの大きな年は、2021年2月期の売上+34%と、2026年2月期の+23%で、どちらもM&Aで子会社が増えた時期と重なります。売上の増え方は、買って足した部分が大きいと見ています。

気になるのは、利益率の動きです。営業利益率は2024年2月期の9.1%がピークで、その後は7%台に下がっています。2024年2月期から2026年2月期で売上は約30%増えましたが、営業利益は約8%しか増えていません。純利益に至っては、2023年2月期の9.1億円を、いまだに超えられていません。規模は大きくなったのに、利益の増え方が追いついていない形です。今期の営業利益16.5億円の計画は、この流れを変えられるかどうかの試金石だと思います。

配当は9期連続の増配計画。ただし、前期の「倍増」には注意

1株配当は次のように動いてきました(株式分割の調整後)。

  • 2019年2月期 7.5円
  • 2020年2月期 15円
  • 2021年2月期 22.5円
  • 2022年2月期 26円
  • 2023年2月期 32円
  • 2024年2月期 33円
  • 2025年2月期 35円
  • 2026年2月期 78円
  • 2027年2月期(予想) 79円(中間39.5円+期末39.5円)

初配当を含めて、今期予想で9期連続の増配です。ただ、前期は35円から78円へ、いきなり2.2倍になりました。期末配当が60円(中間は18円)でした。短信にこの増額の理由は書かれておらず、私は背景を確認できていません。参考までに、中間期の販管費では株主優待費用が約1.2億円減っていて、還元の軸を優待から配当に移したようにも見えますが、これは私の推測です。

会社が示している配当方針は、「配当性向50%」「DOE 6%(下限)」「累進配当(原則として減配せず、維持か増配)」の3つです。

数字を当てはめてみます。

  • 今期の予想配当性向は79円÷152.34円で、約52%。方針の50%と合います
  • 前期の配当性向は72.7%、DOEは11.8%でした
  • DOE 6%を中間期末の株主資本(約44.5億円)に当てはめると、配当総額で約2.7億円、1株で約40円。今の79円は、この下限のほぼ2倍です。つまり、効いているのはDOEの下限ではなく、「50%」と「累進配当」です

累進配当は、利益が計画どおりに出れば心強い方針です。ただ、利益が計画に届かないと、配当の重さがそのまま増えます。中間期の純利益は3.0億円で、中間配当(39.5円、総額約2.7億円)は、その約87%にあたります。仮に下期も上期と同じ利益にとどまると、今期の純利益は約6.1億円、EPSは約91円で、79円の配当は配当性向で約87%になります。

キャッシュを見ると、成長の資金は借入で賄っている

営業CFは、表で確認できる範囲で11期連続の黒字です。ただ、金額は年によって大きく動きます(2024年2月期5.7億円、2025年2月期14.5億円、2026年2月期8.3億円)。

前期(2026年2月期)は、営業CFが8.3億円に対し、投資CFが26.1億円の支出(M&Aが中心)で、フリーキャッシュフローは約17.8億円のマイナスでした。財務CFは16.7億円の収入で、借入で賄った形です。

中間期(2027年2月期)も、営業CFは2.7億円でした。設備・ソフトの投資が約2.4億円、前期のM&Aの代金の残り4.0億円の支払いがありました。そこに、配当金の支払いが3.9億円(前年同期は1.2億円)です。営業CFから設備投資を引いた手元の稼ぎは、約0.2億円。配当は、それを大きく上回っています。差額は、長期借入17.7億円の調達(短期借入は5.1億円減)などで埋めた形です。

有利子負債(借入金と社債)は、2025年2月期末の約16億円から、2026年2月期末は約53億円、中間期末は約60億円になりました。現預金は約32億円あるので、差し引きの純有利子負債は約28億円です。短期借入を長期に付け替えたことで、流動比率は122%から150%に改善しています。ただ、自己資本比率は、2025年2月期末の51.2%から、31.8%まで下がりました。

もうひとつ、バランスシートで見ておきたいのは、のれんと顧客関連資産の合計が約32.6億円あることです。自己資本(約44.8億円)の約7割にあたります。中間期の償却は約2.6億円なので、年間で5億円を超えるペースです。EBITDAが過去最高でも、営業利益が伸びにくいのは、この償却が重いからです。

なお、前期に買収した3社(アイ・ステーション、LGIC、進々堂商光)の会計処理は、中間期に確定しました。のれんの一部は顧客関連資産に組み替えられ、前期末ののれんは約6.5億円減り、顧客関連資産が約9.9億円増えています(繰延税金負債が約3.4億円増加)。償却の年数が変わるので、利益への影響を見ておく必要があります。

金利上昇に強いか

中間期の支払利息は約0.49億円で、前年同期(約0.10億円)の約5倍です。このペースが続くと年間で約1億円で、今期の営業利益予想(16.5億円)の約6%にあたります。

もし有利子負債が約60億円のまま、金利が1%上がると、単純計算で利息は年0.6億円増えます。営業利益予想の約3.7%です。借入の固定と変動の割合は確認できていないので、これは全額が変動だった場合の、上限に近い概算です。

営業利益率が6〜8%の会社にとって、利息の増加は、地味ですが確実に効きます。それ以上に気になるのは、M&Aのたびに借入を積み増してきた点です。金利が上がると、新しい買収の採算ラインが上がり、これまでのペースで買い続けるのが難しくなります。

景気敏感か、ディフェンシブか

私は「やや景気敏感寄りだが、ストックと追い風が下支えしている」と見ています。

景気に左右されやすい面は、機器を売る「フロー」の売上が約8割を占めること、顧客の中心が小規模企業で、設備投資の判断が景気や資金繰りに左右されやすいこと、祖業のOA機器市場が、ペーパーレス化などで成長が鈍っていることです(会社の説明)。

守りの面は、ストック売上が約21億円で前年同期比+78.7%と大きく伸びていること、保有契約5,141件のNo.1ビジネスサポートの平均解約率が0.9%と低いこと、そしてセキュリティの需要です。サプライチェーン攻撃を受けて、大企業が取引先にセキュリティ対策を求める動きが強まっており、会社はこれを「取引要件化」と呼んで追い風と位置づけています。11月からは、監視・資産管理・遠隔サポート・サイバー保険をまとめた「No.1ビジSOC」の提供が始まります。機器を売って終わりではなく、月額で積み上がる収益を増やせるかが、これからの焦点です。

魅力と懸念を整理すると

魅力として挙げたいのは、次の3点です。

  • 売上、売上総利益、EBITDAが、いずれも中間期で過去最高。売上は10年で約2.6倍
  • ストック売上が前年同期比+78.7%で、比率は21.4%まで上昇。セキュリティ需要という追い風もある
  • 「配当性向50%・累進配当」という方針が明確で、予想PERは約11倍、利回りは約4.6%

懸念は次の5点です。

  • 利益が下期に偏った計画。営業利益の進捗は35%で、下期は前年の約1.5倍が必要
  • アイ・ステーションは、中間期の営業利益がほぼゼロ。通期2.3億円の計画が、下期に必要な利益の増加分の約45%を占める
  • M&Aと配当で有利子負債が約16億円から約60億円に増え、自己資本比率は51%から32%に低下。利息は前年同期の約5倍
  • 配当が稼ぎを上回る局面がある。利益が計画に届かないと、累進配当の重さが増す
  • 売上は増えたのに、営業利益率は9.1%(2024年2月期)から7%台、中間期は5.8%へ低下。純利益は2023年2月期のピークを超えていない

まとめ:足した売上を、残る利益に変えられるか

No.1は、他社の機器を売るだけの会社から、作れる会社になりました。社名のNo.1を「一番の会社」と読むかは別として、仕入れて売るだけの会社より、一歩深いところにいるのは確かだと思います。10年で売上は2.6倍になり、顧客基盤は約4.1万社まで広がり、ストック売上も伸びています。

ただ、その強みで稼いだ利益が、連結では、のれんの償却や、買った会社の立て直しの重さで薄まっています。今期の課題は、足した売上を、利益として残せるかどうかだと思います。

配当は「利益の5割」と決め、前期から大きく引き上げました。利益が計画どおり出れば、この方針は素直に株主に報います。ただ、出なければ、配当は借入と手元資金の上に乗ることになります。下期の営業利益10.8億円(前年の約1.5倍)をどこまで達成できるか。それが、利回り4.6%の確かさを決めると考えています。


メモ(次の決算:2027年2月期 第3四半期、2027年1月ごろ)

  • 第3四半期累計の営業利益が、通期目標16.5億円に対して、どこまで進むか
  • アイ・ステーションの営業利益が黒字に乗るか(下期に約2.3億円が必要)
  • アレクソンの営業利益が、通期目標9.7億円に向けて進むか(中間期は4.6億円)
  • 11月開始の「No.1ビジSOC」と、ストック売上比率(中間期21.4%)の動き
  • 新規顧客数(中間期293社、年間目標750社)と、保有契約数(5,141件)
  • 有利子負債(約60億円)、支払利息、自己資本比率(31.8%)
  • 期末配当が予想の39.5円どおりか。現在の中期経営計画は今期が最終年度のため、次の中計の方針と、配当方針の扱い

※この記事は、公表資料と公開データをもとにした個人の考察です。株価、PER、PBR、各種の逆算や概算は私の計算で、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。投資判断はご自身でお願いします。

出典

  • 株式会社No.1「2027年2月期 第2四半期(中間期)決算短信〔日本基準〕(連結)」(2026年10月14日)
  • 株式会社No.1「2027年2月期 第2四半期 決算説明資料」(2026年10月14日)
  • 株式会社No.1「剰余金の配当に関するお知らせ」「No.1 ビジSOC 提供開始」(2026年10月14日)
  • 株式会社No.1「2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」(2026年4月13日)
  • EDINET DB(年次の業績・配当・営業CF・自己資本比率の推移)、J-LiC(キャッシュフロー)
  • Investing.com(2026年10月14日ごろの株価の参考値)